DXの正体を考察する
DXってなんだ?
日本のビジネス界隈でDXという単語が聞かれるようになって数年が経ちます。ところが改めてDXとは何かを問われると、「最新のデジタル技術」、「ビジネス革新」といったキーワードは浮かんでくるものの、『結局何なのかよくわからない。』というのが正直な感想です。そこで本記事ではDXについて考察しDXが何者なのかについてひとつの答えを導きたいと思います。
DXの定義いろいろ
「DX」をキーワードに検索してみると、実に様々なWebサイトが見つかります。
これらのWebサイトを読み進めていくと、DXを説明する上で「競争上の優位性」、「ビジネスモデルの変革」、「既存システムの刷新」といった言葉がポイントだと言うことがわかります。しかし具体的にDXが何かを知るには、もう少し踏み込んで調べる必要がありそうです。経済産業省は2018年にDXに関する2つのレポートを公開しました。DX レポート ~ IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開 ~ とデジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0です。どうやらこれらのレポートにDXの正体に迫るヒントがありそうです。
DX レポートとDX推進ガイドライン
2018年9月に公開されたDX レポートを読むと、IDC Japan株式会社の定義を引用してこう書かれています。
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラ ットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
引用元:DX レポート~ IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~
つまり、
がDXだと言うのです。
うーん…。な、る、ほ、ど…。DXの定義は分かりました。が、果たしてどれほどの企業が第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)をビジネスモデルに組み込み、利益に繋げることができるのでしょうか。利用が拡大しているとは言えクラウドはシステムを構築する手段の一つに過ぎませんし、ソーシャル技術も業種によっては使い所が限られます。モビリティやビッグデータ/アナリティクスに至っては表現が抽象的なので、受け手がいかようにも解釈できます。第3のプラットフォームの効果が限定的だとすると、なぜここまでDXを推進させたがるのでしょうか。その真意を求めてもう少し読み進めるとこのような表現が見つかりました。
今後 DX を本格的に展開していく上では、DXによりビジネスをどう変えるかといった経営戦略の方向性を定めていくという課題もあるが、そもそも、既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化する中では、データを十分に活用しきれず、新しいデジタル技術を導入したとしても、データの利活用・連携が限定的であるため、その効果も限定的となってしまうという問題が指摘されている。
引用元:DX レポート~ IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~
ここで「老朽化・複雑化・ブラックボックス化されたシステム」という言葉が出てきました。老朽化・複雑化・ブラックボックス化を少し粗い表現で分かりやすく言い換えると次のようになります。
- 老朽化:壊れやすい
- 複雑化:修正や機能追加に時間がかかる
- ブラックボックス化:なぜシステムが動いているか誰もわからない
文脈ではこれらのシステムをDXを本格的に展開する上での課題の一つとして位置付けていますが、今本当に取り組まなければならないのは他でもなく、『壊れやすく、修正や機能追加に時間がかかり、なぜシステムが動いているか誰もわからない』システムから脱却することではないでしょうか。
ではそうしたシステムから脱却しその先にあるDXを達成するためにどうすればいいのでしょうか。DX推進ガイドラインには12の指針が示されていますが、その中の一つに「経営トップのコミットメント」としてこのような記載があります。
DX を推進するに当たっては、ビジネスや仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化・風土そのものの変革が不可欠となる中、経営トップ自らがこれらの変革に強いコミッ トメントを持って取り組んでいるか。仮に、必要な変革に対する社内での抵抗が大きい場合には、トップがリーダーシップを発揮し、意思決定することができているか
引用元:デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0
なぜ経営トップのリーダーシップが必要なのでしょうか。情報システム部門だけで出来ないのでしょうか。その理由はこちらに書かれています。
加えて、既存のITシステムがビジネスプロセスに密結合していることが多いため、既存のITシステムの問題を解消しようとすると、ビジネスプロセスそのものの刷新が必要となり、これに対する現場サイドの抵抗が大きいため、いかにこれを実行するかが課題となっているとの指摘もなされている。
引用元:デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0
仮に「老朽化・複雑化・ブラックボックス化されたシステム」の影響範囲が限定的であれば情報システム部門だけでも十分対応できるでしょう。しかし実際には数十年前にメインフレーム上に構築した基幹システムであることが多いのではないでしょうか。その場合影響範囲は全社に及び、これまでの運用がガラリと変わってしまうことも少なくないでしょう。現場サイドの抵抗と強めの表現で書かれていますが、営業、製造、物流、経理、その他全ての部門の日々の業務に影響が出ることを考えると、システムを使う側の負担は計り知れません。そのような変革を行う際には経営トップのリーダーシップは必要不可欠だとここでは述べています。
DXの一丁目一番地はレガシーからの脱却
ここまでDXについて考察してきましたが、DXの推進を命題とするならばまずは老朽化・複雑化・ブラックボックス化されたシステムから脱却することが最優先だと考えます。その過程で構築した新しく・シンプルで・自由にカスタマイズできるシステムと第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を組み合わせてビジネスモデルを変革し、高い利益を上げることが真のDXだと考えます。
参考までに
メインフレームからの移行を想定したAWS Mainframe Modernizationというサービスがあるようです。
aws.amazon.com