DX事例の考察 ~ビックカメラ社編~
ビックカメラ社のDX
6月13日ビックカメラ社は「パーパス実現に向けて DX宣言を発表」と題してニュースリリースを発表しました。[注:1]このリリースでビックカメラ社は同社が掲げる「お客様の購買代理人として くらしにお役に立つくらし応援企業であること」を実現するためにデジタル技術の活用(DX)を推し進めると宣言しています。
このニュースリリースでDXに向けた具体的な取り組みとして
- 「Salesforce Lightning Platform」[注:2]、「BizRobo!(RPA)」[注:3]、「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」[注:4]をプラットフォームにしたシステム開発の内製化
- 「Salesforce Lightning Platform」への既存基幹システム機能のマイグレーション
- 「IT トランスフォーメーションパッケージ 2.0」[注:5]を活用した基幹システムのAWS移行
が挙げられています。
注目すべきは既存の基幹システムをSalesforceとAWSに移すと明確に宣言している点です。以前このブログでも取り上げたようにDXの成功に基幹システムの刷新は欠かせません。
ここまでDXについて考察してきましたが、DXの推進を命題とするならばまずは老朽化・複雑化・ブラックボックス化されたシステムから脱却することが最優先だと考えます。
ビックカメラ社は基幹システムをクラウドへ移行することで、DXの実現をより確実なものにしようと考えているのではないでしょうか。また、同リリースではSalesforceの「Salesforce Service Cloud」[注:6]と「Salesforce Marketing Cloud」[注:7]を中心にシステム構築を内製すると述べています。こうしたCRMへの熱量から顧客との接点を最重要課題と位置づけ顧客の要望に対し柔軟にかつ迅速に対応する体制を整えるという意図が感じられます。さらにAmazonConnect[注:8]とService Cloud Voice[注:9]を連携したコンタクトセンターの実証実験にも触れており、コンタクトセンターを同社DXの中核に置いていることが見て取れます。
ちなみにですが、AWSとSalesforceによるコンタクトセンターの過去事例を調べたところ、2019年によく似た事例が見つかりました。
カインズが挑戦する攻めと守りのコールセンターとそれを実現するクラウド推進チームの活動秘話
ビックカメラ社のDXアーキテクチャを考察
ビックカメラ社のDXについて概要がわかったところで、ここからは同社のプロジェクト担当者になったつもりでアーキテクチャを想像し、考察していきます。
まずは2022年6月14日現在公開されている情報を元にビックカメラ社のDXアーキテクチャを想像してみましょう。ニュースリリースだけでは情報が足りないので過去事例を中心に調査してみます。
こちらはIBMによるDWHの導入事例です。比較的最近の事例で、IBMのクラウドを使って構築されているようです。
www.ibm.com
こちらはCisco Merakiによる社内LANの導入事例です。個人的にMeraki大好きなので、この導入事例はたいへん共感できました。拠点のVPN機材をクラウドで一元管理できてconfigまで流し込めるなんてステキ!
meraki.cisco.com
Meraki 2019 総合カタログ 秋冬 - Cisco
求人情報をあさってみるとこんな情報が見つかりました。掲載時期など詳細はよくわかりませんでしたが、応募に必要な経験・能力等のみ抜粋して参考程度に見てみましょう。
【技術環境】
■AWS:EC2、ELB、S3、FSx、CloudWatch、Lambda、SystemsManager、
RDS、WorkSpaces
■OS:windowsサーバ、Linux
■その他ソフト:ActiveDirectory、WSUS、Oracle、SQLserver、ZABBIX
■Web環境:CDN
AWS関係の技術を見るとEC2、ELBの技術が求められています。このことからEC2の機能で仮想マシンをスケーリングさせつつELBで負荷分散させる構成が想像できます。
「そういえば、求人情報にCloudftontやAWS WAFの記載なかったなー。」なんて思いながらECサイトのドメイン情報を調べてみると…。
なるほど、CDNにLimelightを使ってるんですね。WAFもLimelightでしょうか?
www.limelightnetworks.jp
というわけで、ニュースリリースの情報をベースに各種導入事例を総合して「もしも私がビックカメラ社のプロジェクト担当者だったら」と妄想して描いたアーキテクチャがこちらです!
いかがでしょうか、構築におけるポイントは「EC2の負荷分散」、「SalesforceとAWSのデータ連携」、「コンタクトセンターからのアクセス」の3点です。
EC2の負荷分散はELBとEC2のAuto Scaling[注:10]で実装するとして、SalesforceとAWSの連携についてはAmazon App Flow[注:11]などが挙げられます。またコンタクトセンターからはクラウドの利点を活かしてWeb経由でアクセスする方法が考えられます。認証の手がかりは見つけられませんでしたがSaaSでSSOを採用する方法も考えられます。
使用するサービスに制約がないのであれば、コンテナのエッセンスを入れてみるのもいいかもしれません。去年のJAWSUGでもコンテナをテーマにした回がいくつもありました。[注:12][注:13][注:14]こちらはBeanstalkを使った事例です。
Amazon EC2 は使わない!?クラウドネイティブな開発スタイルがもたらすビジネスの加速化
DXの成功に向けて
ここまでビックカメラ社のDX事例を考察してきました。公開されている情報によると採用するサービスやツールは実績のあるものが多いですし、基幹システムの移行を軸に置いているあたり真のDXを目指すいいお手本と言えるのではないでしょうか。あとは運用がドラスティックに変わるであろう社内の各部門の理解いかに得られるかが成功の鍵になると思います。ぜひともDXを成功させていただきたいと思います。
[注:1]パーパス実現に向けて DX宣言を発表
[注:2]Lightning Platform | セールスフォース・ジャパン
[注:3]BizRobo!とは | RPA テクノロジーズ株式会社「BizRobo!(ビズロボ)」
[注:4]アマゾン ウェブ サービス(AWS クラウド)- ホーム
[注:6]Service Cloud 製品概要|カスタマーサービス | セールスフォース・ジャパン
[注:7]Marketing Cloud - One to Oneカスタマージャーニープラットフォーム | セールスフォース・ジャパン
[注:8]Amazon Connect(クラウドベースのコンタクトセンター)| AWS
[注:9]Service Cloud Voice : コンタクトセンター管理 | セールスフォース・ジャパン
[注:10]Amazon EC2 Auto Scaling(需要に合わせてコンピューティング性能を拡張)| AWS
[注:11]Amazon AppFlow が、AWS と Salesforce 間のプライベートデータ転送のサポートを開始
[注:12]JAWS-UG 名古屋 コンテナを語ろう!! - JAWS-UG名古屋 | Doorkeeper
[注:13]JAWS-UG名古屋 コンテナサービスを学ぶ - JAWS-UG名古屋 | Doorkeeper
[注:14]JAWS-UG関西「コンテナ勉強会/App Runnerハンズオン(見るだけOK)もあるよ」 - JAWS-UG KANSAI | Doorkeeper